長谷川 |
皆さんこんばんは、ヤニス・バルファキスさん今日はご参加、本当にありがとうございます。 |
ヤニス |
喜んで! |
長谷川 |
れいわ新選組、参議院政策委員の長谷川ういこです。 |
長谷川 |
そして通訳はですね、同じくれいわ新選組のメンバーで、元ユネスコの職員である米村明美さんです。 |
長谷川 |
れいわ新選組は、バルファキスさんが立ち上げた政治運動であるDiEM25 やプログレッシブインターナショナルに非常に近い理念や政策を持った政党です。 |
長谷川 |
私は2019 年に、今日のパネラーである朴勝俊(パクスンジュン)さんと一緒にヤニスさんの回顧録「黒い匣」を明石書店から翻訳出版しました。そのご縁で今日はインタビューを引き受けていただきました。 |
長谷川 |
「黒い匣」は、ヤニスさんの回顧録なんですが、ヤニスさんはギリシャの経済危機が最も深刻だった2015 年に財務大臣として、緊縮を押し付けてきた、ギリシャの人々の尊厳を踏みにじったトロイカと最前線で戦ってこられました。 「黒い匣」には、その戦いが克明に記されています。私たちはその頃のギリシャの人々の苦しみやユーロ圏が抱えていた問題、そしてバルファキスさんたちのチームがそれをどのように打ち破ろうとしていたのか、それをこの本を通じてよく理解しているつもりでおります。 |
長谷川 |
しかしですね、日本では先日、石破茂首相が「日本の財政は間違いなく極めてよろしくない、ギリシャよりもよろしくない」と発言しました。で、この発言はですね。恥ずかしいことに世界中に報道されたわけです。 |
長谷川 |
私はこの発言が、経済に関する首相の理解の浅さを露呈していると、国営放送の討論会 NHK の討論会で批判しました。また、ギリシャの人々に対しても非常に失礼な発言だと怒りを覚えています。 |
長谷川 |
振り返れば、十数年前、当時の民主党政権の野田義彦首相も「ギリシャは対岸の火事ではない」と言って、消費税の増税を決めました。これが現在まで続く日本の経済停滞につながっています。 |
長谷川 |
それでは、早速ヤニスさんにお伺いしたいと思います。ヤニスさん、回顧録の序文の中で日本とギリシャは全く違うと述べておられますが、今回の石破首相の発言をどのように捉えておられるでしょうか。是非、日本の視聴者にお話いただきたいと思います。 |
ヤニス |
2つポイントがあります。1 つ目は、親切な優しいコメントですけれども、長谷川さんが言われたように、首相はちゃんと経済を理解してないということです。 |
ヤニス |
2つ目の理由はもっと現実的なもので、私が本当に信じているものですけれども、どの国の首相も、人々に対する階級闘争を仕掛ける時には、まず自分の国とギリシャとを比較するということです。 |
長谷川 |
はい、ヤニスさん、日本の首相の発言に関して、世界中でもやはりギリシャと自国を比較している、ギリシャと自分の国を比較するものだと仰いましたけれども、やはりそれをギリシャが非常に経済的に、金融機器の時に破綻した、破綻寸前だったからだと思いますけれども、それはヨーロッパ、各国でも同じ状況なんでしょうか? |
ヤニス |
では、これまで述べたことを3つのステップで説明しましょう。最初のステップは、なぜ日本がギリシャと根本的に異なるのかです。これが最初のステップで、その理由を説明します。 日本は巨大な貿易黒字国、国際収支黒字を有する国です。つまり、国家としては、支出するよりも多くの外貨を手に入れているのです。 これが第一点です。 第二点。日本の債務残高が大きいといっても、それは自分たちに対するものです。つまり、政府は債務の大部分を、自国民に対して負っているのです。年金基金や個人貯蓄などですね。これらの条件はいずれも、ギリシャの場合には当てはまりません。 まず、過去数十年間、現在に至るまで、ギリシャは経常収支赤字でした。つまり、民間部門と公共部門の両方が、自国が輸出するよりも、はるかに巨額の外国の製品やサービスを購入していたのです。 次に、ギリシャは外国に対する債務を抱えていました。つまり、公共債務の大部分を外国に負っていたのです。そして、これが最も重要な点です。なぜ日本の首相が日本とギリシャを比較することがとんでもないことなのか。ありえないことなのか。私たちは自国通貨を発行していませんでした。私たちは、日本とちがって、自分で発行できない通貨で借金をしていたのです。したがって、あなたの首相が完全な愚か者でない限り、彼は嘘をついています。私は愚か者ではないと思います。彼は日本とギリシャを比較する際に、完全に、完全に嘘をついているのです。通訳が済んだら説明します。 |
朴 |
ちょっと補足してよろしいでしょうか? 現在日本はエネルギーが高くなって、貿易そのものは少し赤字が出ているのですけど、経常収支の方で黒字が続いています。オーディエンスの方からも質問があったので、私の方でひとつ補足の質問をしたいんですけども、米村さん通訳お願いします。 |
朴 |
今のポイントは通貨主権ですね。monetary sovereignty、通貨主権を持っている日本と、ユーロに入ってしまって通貨主権を失ったギリシャ、そこが多分1番違うと仰ったんだと思います。つまり、ユーロはギリシャにとって自国通貨ではないということだと思うんですが、そこが1番違うというところだと思うんですが。 だとすると、私どもが、ちょっと関心がありますのは、ドイツもいわばユーロに加盟したことによって通貨主権を失ってしまってですね、ドイツもいわば地方自治体のようになっていませんか? ということなんですね。 ですから、ドイツの財政状況ってすごく健全だって言われているんですけれども、実際のところはドイツでさえも日本よりも状況が悪いっていう理解も成り立つように思うんです。実は日本の左派であれ学者であれ、ドイツがすごく健全でドイツのように健全財政をすべきだっていう風に考えている人がとても多いので、その辺りのお考えも聞かせていただけますでしょうか。 |
ヤニス |
そうですね、ドイツを真似るべきではありません。ドイツは失敗しています。ドイツは産業空洞化が進んでいるのです。そして、失敗した権威主義国家へと変貌しつつある。日本がそうなる必要がありますか? つまり、どの国にも問題があるのです。日本にも問題はあるでしょうが、ドイツのような問題はありません、ないです。 スンジュンさん、たしかに、ギリシャと日本の根本的な違いは、ギリシャが通貨主権を失ったことです。ですが、それだけではありません。 もう一つの重大な点は、先ほども言ったように、日本とは違って、国際貿易と資本の流れにおいて、ギリシャは常に赤字があったということです。 第二の点は、ドイツも同じです。ギリシャやドイツの債務の多くは、自国民や自国の機関によって保有されているものではありません。ドイツも同じ問題を抱えています。ドイツの公的債務は外国の機関によって保有されています。そして、この… 根本的に、日本はドイツやギリシャと比べて、特権的な立場にあります。日本は遙かに特権的です。説明しましょう、なぜ石破首相たちがギリシャと日本の比較に依存しているのか。 その理由は、東京の権力者たちが非常に興味を持っていることが一つあるからです。その一つは、大多数の低所得層や労働者階級、中間層から、富裕層へと、いかにして所得を吸い上げるかです。それが彼らの関心事です。 彼らは、緊縮策によって、それを実現できると知っています。皆さんは消費税について言及しました。消費税を引き上げれば、所得税が減らせます。所得は貧困層から富裕層へと移転するのです。彼らは公衆衛生や公教育への支出を削減したがります。なぜか? 富裕層は貧困層が病院で治療を受ける費用を支払いたくないし、貧しい子供たちが大学に行く費用を支払いたくないからです。 先ほども述べたように、これは階級戦争です。そしてこう聞かされるでしょう。財政政策においては保守的である必要がある、財政状況を安定させる必要がある、財政を均衡させる必要がある、と。 違います、財政を均衡させる必要はありません。 なぜなら、政府が財政を均衡させ、財政赤字を解消すれば、人々が赤字を抱えることになるからです。 誰かが赤字を抱えなければならないのです。それはよく理解できるでしょう。全員が黒字になることはできません。日本が世界に対して大きな黒字を抱えているときに、政府も貿易黒字を抱えたり均衡財政を実現させると、日本の人々が赤字を抱えることになります。 そして、当然ながら、その赤字を抱えるのは富裕層ではありません。人々の60%です。これが単なる経済論議ではないという理由です。 これは皆さんの国の未来に関する問題です。そして、皆さんの国の未来には、皆さんの行動が必要です。 それで、皆さんが政治の場で、超富裕層の政治家たちに対抗する行動を起こしていることを、私は非常に嬉しく思います。日本の大多数の人々のために。赤字を抱えて苦しんでいる被害者のために |
長谷川 |
ありがとうございました。少々お待ちください。 |
朴 |
ちょっと補足させてもらっていいですか? 基本的な会計式なんですよね。「政府の黒字」と「民間の黒字」と、あと「外国の黒字」って必ず、金融取引の関係は、金融資産の関係は、合計でゼロになります。だから「誰かの赤字は誰かの黒字、誰かの債務は誰かの資産」ということなんで、政府が黒字になると皆さんが赤字になるんだという、そういう当たり前のことを説明されてました。 |
長谷川 |
はい。ですから、特にギリシャなんかは貿易では統一通貨なので、常に赤字になってしまうということで、非常に苦しい状況に置かれている。これはドイツが、日本で言うと東京のような、すごく独り勝ちのように見えるんですが。とはいえ、やはり日本よりははるかに悪い状況にあるということをヤニスさんが説明してくれています。で、先ほど言われた 1番重要なところですね。やはり債務をなくしてしまおう、つまり赤字をなくそうということが良いように聞こえるんですが、そうではなくて、赤字を無くすということ自体が国民を苦しめることなんだということを、ヤニスさんがご自身の経験からも、強くそれを言っていただいているということです。 |
長谷川 |
ではですね。続いて、ヤニスさんに皆さんからもたくさんの質問いただいてますので、それを踏まえて少しご質問したいと思います。 通貨主権を持っている日本と、ユーロに加盟してそれを失ったギリシャというのは、本当に大きく違うというのは今までのところで非常によくわかったんですけれども、日本の緊縮派はギリシャ以外にイギリスのトラス政権の時のいわゆるトラスショックをしばしば引き合いに出します。あれは何が問題の原因だったとお考えでしょうか?中央銀行の独立性などと、これは関係がありますでしょうか? |
ヤニス |
いいえ、いいえ、日本とイギリスを比較することは、ギリシャと日本を比較するのと同じぐらい馬鹿げたことです。 今、イギリスがギリシャよりも良い状態にあるのは、スンジュンさんが先ほど述べたように、イギリスは通貨の独立性を維持しているからです。彼らは自国通貨のイギリスポンドを保有し、イギリスポンドで借入れを行っています。 しかし、イギリスは日本と違って、毎年大規模な経常収支赤字を出しています。彼らは、海外からモノやサービスを購入するために、自国で稼ぐドルよりも多くのドルを支出しています。これは、彼らが常に通貨安の圧力を受けていることを意味します。これは、日本が抱えていない問題です。 繰り返しますが、日本において、「トラスショック」が起こるぞと言って恐怖を煽る政治家は、愚か者か嘘つきです。皆さんは今こそ見抜く必要があります。 皆さんは愚か者に騙されているのか、それとも、日本の一般市民に恐怖を拡散し、貧しい者から富める者への暴力的な所得と財産の移転を推進するために、非常に巧妙に恐怖を煽る者たちに、騙されているのか? (ヤニス) 1979年以降、マーガレット・サッチャー政権下でイギリスは深刻な緊縮政策を実行しました。 イギリス国民に対して深刻な緊縮政策を強いたのです。そして、彼らは事実上、産業を破壊し、荒廃させました。主要な産業を次々と閉鎖したのです。 自動車メーカーや、鉄鋼製品、鉱山など、すべてを閉鎖し、サービス業への移行を進めました。これにより、実質的に輸出を停止したのです。あらゆる製造業がそうなったのです。それが現在の状況につながっています。 さて、ギリシャや英国を例に挙げて、日本の人々を脅して、緊縮策を受け入れさせようとする日本の政治家は、マーガレット・サッチャーが犯した経済犯罪を繰り返すことになるでしょう。 なぜなら、ドナルド・トランプが米国への輸出をガタ落ちさせている状況で、日本で緊縮策を実施すれば、日本の産業は投資を切り詰めるに違いないからです。 工場は閉鎖されるでしょう。 いいですか、そんなことをすれば、それこそが日本版のトラス・ショックに繋がるのです。 では、解決策は何でしょうか? 解決策は、日本の低所得層の収入を増やし、いま米国に輸出されている工業製品を、購入できるようにすることです。これは、緊縮策とはまったく逆の、日本が必要としている政策です。 |
長谷川 |
はい、ありがとうございます。米村さんに今通訳していただいたように、実は緊縮をイギリスはすごくやったということです。実はそれまで製造業が盛んだったんですが、製造業がかなり壊滅をしていまして、今では金融とか一部のサービスしか残っていない、工業がなくなってしまったという状況があります。 それについてヤニスさんが非常に丁寧に説明してくれていました。 |
長谷川 |
ここで続いてせっかくですので、トランプ大統領の話題が出ましたので聞いてみたいんですけれども、今のトランプ政権の様々な動きについて、ヤニスさんはどういう風に見ていますでしょうか? あれは非常に深謀遠慮があってやっているという方と、実は有名な経済学者の皆さん、例えばブランシャールなども含めてですね。あれはむちゃくちゃやってるだけだという評価もありますが、どういう風に見ていますか? |
ヤニス |
トランプの経済チームは、私にとって興味深く、おおむね正しいと考えられる、世界経済分析から始めました。そのうえで問題よりも悪い解決策へと進んでいます。分析は良いが、実践は悪い。分析の良い点は、私たちが数十年にわたり指摘してきた点に言及していることです。私たちは、非常に奇妙なグローバル経済に生きています。日本や中国、ドイツの純輸出国は、アメリカの貿易赤字によって支えられており、日本や中国、ドイツがアメリカへの輸出で得た貯蓄は、ニューヨークに流れ込み、アメリカの財政赤字や貿易赤字、不動産、そしてウォール街に資金を与えています。 まさにこれが、大幅な不均衡を伴う世界における、不均衡の世界の意味です。彼らは、それを変えなければならないと言っています。私はそれに同意します。私は少なくとも30年間、このことを主張してきました。しかし、彼らは本当にそれを実行するのでしょうか? アメリカ政府は、暴君のような独裁者のような方法で、巨額の関税を脅しに使って、禁輸措置を行っています。 そして、それぞれの国と、別々に、交渉を行っています。そして、おそらく日本の政府はアメリカの属国だから、アメリカが言うとおりに何でも従うでしょう。それは日本の人々にとって恐ろしいことです。 日本政府は、何でも言われた通りにするでしょうが、中国は言うとおりにはしません。世界中の多くの人々も言いなりにはなりません。 したがって、トランプ政権の分析が妥当だとしても、最終的にトランプの計画は機能しないと思います。 では、日本政府はどのようにすべきでしょうか?ヨーロッパは?中国は?これが非常に大きな問題なのです。 |
長谷川 |
はい。トランプ政権の経済政策は、非常に世界中に大きな影響を与えますし、 1番のポイントは、やはりアメリカが赤字ということの反面、私たちが黒字になっている。だから、先ほどの、政府が赤字だと民間が黒字だと言ってるのと同じように、貿易もそれが成り立っているということですね。ですから、アメリカが赤字を削減しようとすると、別に他のところが赤字になってしまうということになるわけですね。その辺りの仕組みを少しヤニスさんが解説をしてくれていました。 |
長谷川 |
それではですね。引き続きヤニスさんにちょっとお伺いしたいと思います。 日本はですね、石破首相なんかが「日本の財政がギリシャより悪い」というような時の根拠はですね、政府債務残高対 GDP 比を出してくるんですね。で、これで比較することについて、どのようにお考えでしょうか?日本は実は、主要国の中で物価上昇率が非常に低い、金利も低いんですね。先ほどヤニスさんが言ったように外国に対する債務も非常に少ないわけです。それなのに債務残高対 GDP という指標を持ってきて、日本の財政は危機的であると繰り返し、財務省、まあ与党が説明するわけですけれども、これについて是非ビシッとコメントをお願いします。 |
ヤニス |
日本にとって、債務対GDP比率は何の意味もありません。その数字は見る必要すらありません。それがいくらであれ、問題ではありません。なぜそうなのかは説明しました。言うなれば、私のズボンの右ポケットが、左ポケットに相当な金額を借りているような状態です。何の問題もありません。 私が、ただ単に、左のポケットからお金を取り出して右のポケットに入れているだけです。もし外国人にかなりの金額を借りているならば、それは問題です。なぜなら、私はその外国人を説得できないからです。外国人は私に対して権力を持っていることになります。 では、考えてみてください。日本の財政状況がこんなに悪いのなら、なぜ世界中の人々が、アメリカ政府に対する金利の4分の1の金利で、日本の政府におカネを貸そうと必死になっているのでしょうか? その答えは、経済について少しでも知っている人なら誰でも、日本の公的債務は問題ではないと分かっているからです。なぜなら、先ほど言ったように、それは右のポケットが左のポケットに借金しているようなものだからです。日本の首相なんかが騒ぎ立てて、皆さんに恐怖を抱かせようとしているのは、まさに、問題が無いからなのです。 ですから皆さんは、これが、中間層や労働者階級から富裕層へと、巨額のカネを移転させるための、明確かつ明白な試みなのだと、認識するべきなのです。 |
長谷川 |
はい、右のポケットから左のポケットに移すだけというのが非常に分かりやすくて面白い表現だったと思いますが、本当に、債務対 GDP 比というのを、もうしょっちゅう持ってくるんですね。必ず財政が悪いという理由に持ってくるんですが、それ全く無意味だということをヤニスさんがビシッと切ってくれました。 それではですね、せっかくなので、通訳もかねていただいている米村さんからも質問をしていただきましょう。米村さん、お願いします。 |
米村 |
じゃあ私からこの本の中に書いてあったことと関係のあることで、今起きてることに関連して質問したいと思います。 この本を持ってる方は 83 ページに載ってるんですけれども、不況が政治的中間層を崩壊させて、ナチズムが醜悪な姿を現すというのは、歴史上よくあることだと書かれています。世界恐慌の時のヒトラーがまさにそうですし、日本でも昭和恐慌の中で、青年将校によるテロが何度か起こりました。ギリシャ危機の場合は「黄金の夜明け(Golden Dawn)」です。トランプの再選や、近年の欧州での右派の台頭も、間違った経済政策と関係があると思いますか? という質問を自分で訳します。 |
ヤニス |
全くそのとおりです。緊縮策の組み合わせがそれをもたらすのです。それは多数の人々の所得を奪うことです。そして、中央銀行による量的緩和と呼ばれる政策も、つまりお金を印刷するという政策も、日本もこのような政策を続けてきたわけですが、これは多数派に対する緊縮策と、一部の金持ちのための量的緩和の組み合わせです。この二つを組み合わせると最悪の組み合わせになります。 何が起こるかというと、中央銀行が超富裕層のためにおカネを刷ると、彼らはあらゆる不動産を購入するのです。その結果、住宅価格が上昇し、家賃も上昇し、貧困層は緊縮策の犠牲となり、収入が減少して、生活していけなくなります。そして彼らは怒りを募らせます、多数の人々が怒りを募らせます。 巧妙な極右や、差別主義者、排外主義者、ファシストの政治家が、この怒りをまんまと利用します。この怒りが、ヨーロッパと日本において第二次世界大戦のような状況を生み出しました。そして再び同じような状況が繰り返されています。私は、日本において何が起こっているのかは分かりません。ファシストが台頭しないことを願っていますが、そうなるかもしれません。 ヨーロッパには「ドイツのための選択肢(AfD)」や、フランスのルペンがいます。オランダのウィルダースは政権に就いています。スペインとポルトガルでは「チェガ」というファシストの台頭が見られます。ギリシャは「黄金の夜明け」(ナチス系政党)を打ち破りましたが、今でも議会に3つ4つのそれ系の派閥が台頭しています。 ですから、多数の人々に対する緊縮策と、少数のエリートに対する貨幣印刷は、ファシズムにとって最大の贈り物なのです。 |
朴 |
あの、追加の質問をしてもよろしいですか?オーディエンスからの質問があったんですけれども、一部の人へのお金持ちへのマネープリンティングは良くないとおっしゃったんですけど、全ての人々へのマネープリンティングって言うんですか、まあベーシックインカム的なものに関しては、ヤニスさんはどうお考えになりますか? |
ヤニス |
完全に賛成です。しかし、単に紙幣を印刷するだけでは不十分だと思います。より根本的で合理的な措置が必要だと考えます。 私はそれを「貨幣コモンズ」と呼んでいます。例を挙げましょう。例えば、日本銀行が単におカネを印刷するのではなく、日本の人々がスマートフォンからアプリストアでダウンロードできるようにするのです。AndroidでもAppleでもいいです。日本銀行ウォレット(デジタル財布)をダウンロードできるようにするのです。 そして、雇用主に「給与を銀行口座ではなく、そのウォレットに入れてください」と言うのです。 そして日本銀行が、商業銀行が支払う金利と同じぐらいの金利を、みなさんに支払うとしましょう。この公式の金利は、商業銀行がみなさんに支払う金利よりも、つねに高くします。 さらに、そのアプリは、日本国内だけでなく、外国にも無料で送金できる機能も備えています。これが貨幣コモンズです。なぜなら、これは政府に属するからです。これは商業銀行システムを脱した、もう一つの決済システムです。 考えてみてください。商業銀行の口座からお金を取り出して、日本銀行の口座に移すのですよ。 すると、民間部門のマネーストックが減少します。7倍、8倍、9倍、10倍減少します。なぜなら、 民間銀行は今までのように、貨幣供給量を拡大できなくなるからです。つまり貨幣供給量は減少します。日本銀行は毎月、日本銀行の市民ウォレットに、一定額のおカネを入金します。これが、全ての人々のためのベーシックインカムです。そして、全体の貨幣量が維持されているので、インフレは起こりません。 ですから、これは単に貧困層におカネを印刷して配るという話ではありません。新しい貨幣コモンズを創造するという話です。そして、その貨幣コモンズによって、ベーシックインカムを実現するということです。 これは革命的なことになります。 |
長谷川 |
はい、少し補足を。 |
朴 |
本当に説明すると難しくなると思うので、多分ヤニスさんのどれか他の本で詳しく説明されてると思うんですけど、どの本のあたりで書いてましたっけ? |
ヤニス |
SF小説の「アナザー・ナウ」です(※ 日本語版は「クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界」です)。 |
長谷川 |
「アナザーナウ」というヤニスさんの本があるんですけれども、そこでですね、この構想について、ヤニスさんが非常に詳しく説明しています。また、ヤニスさんはですね、世界共通通貨のコスモスというのを提案されていたことがあります。その辺を含めて新しい通貨の発行の仕方を。さらに私たちがなかなか想像しがたい、今は一国の話をしてますけど、世界共通みたいなことも含めてヤニスさんは実は語っています。ちょっとこれに踏み込むと、説明がおそらく長くなるので、今日はちょっとはしょりますけれども、そういう構想も実はヤニスさんは持っていて、非常に実はここも綿密に説明をしておられますので、著書の中で皆さんよかったらご覧ください。 それでは、引き続いて、ヤニスさん、違う質問に移りたいと思うんですが、私も実はグリーン・ニューディールがまさに専門なんですが、ヤニスさん 2019 年の欧州議会選挙でグリーン・ニューディールを中心的な政策として掲げて戦っておられましたが、私たちれいわ新選組も公約の柱の1つに、反緊縮グリーン・ニューディールを掲げています。今トランプ大統領が気候変動はないとか言って、非常にですね、気候変動対策もまあちょっと危機的な状況ではありますが、こういう時だからこそ、グリーン・ニューディールが非常に重要だと私は考えていますけれども、どうでしょうか?積極財政の使い方としてこのグリーン・ニューディールが最も重要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか? |
ヤニス |
正直、私はアメリカで前進はないのではないかと思います。なぜなら、現実を直視すれば、トランプがそれを望んでいないからです。彼は望んでいません。彼は気候危機など詐欺だと信じています。そして、2019年には、私たちが選挙で敗けて、グリーン・ニューディールを実施できませんでした。代わりに、欧州委員会の議長が「グリーン・ディール」を提唱しましたが、それは全くのフェイクでした。それはグリーンでさえなく、今では放棄されてしまいました。そして今、ヨーロッパでは再軍備が代わりの政策となっています。私は本当に怒っています。では、率直に言います。私の唯一の、唯一の希望は中国と日本です。この2カ国だけが、グリーン・ニューディールを実施する意思と能力を持っていると私は見ているからです。少なくとも能力はあります。どこかで、始めましょう。日本から始めれば素晴らしいし、中国から始めてもよい。中国の人たちは興味を示しています。彼らはそれを進めているようです。別の地域では…インドは可能性に満ちていますが、同時に、極右的な、民族主義的で排外的な立場に急激にシフトしています。インドについて希望を持てれば良いのですが、そうは思えません。しかし、あなたの国と中国、韓国や他の東南アジア諸国と連携すれば、グリーン・ニューディールのプロセスを開始できる可能性はあります。 |
長谷川 |
うん、本当ですね。中国は実はあのグリーン投資を非常に大規模にやっていまして、確かに公害も多いんですが、一方でグリーン産業が非常に今、猛烈な勢いで伸びている国でもあります。 日本はですね。ここがまさに分かれ目で、今グリーン投資をするかどうかで、ヤニスさんが言っておられたように、日本と中国が主流になるのか、中国が1人勝ちするのかというところにおそらく岐路にいると、私は見ています。是非日本でもグリーン・ニューディールを。さっきヤニスさんがちょっと言ってましたけど、ヨーロッパにもグリーンディールというのが、あるのですが「あんなのは違うんだ。フェイクだ」と仰ってましたけど、日本でも政府がやっている GX というのが、グリーントランスフォーメーションというのがあるんですが、確かに原発が入っていて非常に問題のある内容です。そうではなくて、ちゃんとしたグリーン政策をやるということが、おそらく世界の希望になるだろうということで、本当に力強いね、メッセージをいただきました。 |
長谷川 |
では、だんだん時間が迫ってきましたが、最後にヤニスさんにぜひお伺いしたいのが、私たちれいわ新選組はですね、消費税を廃止して、今まで下から上に富の吸い上げが行われていたのを、逆にしようということで非常に強く訴えています。これについてどのように思われますでしょうか? |
ヤニス |
みなさんの党の活動に、私は注目してきました。れいわ新選組の政策に、全面的に支持を表明します。これは日本が必要としているものだと考えます。これはアジア地域全体が必要としているものだと考えます。そして、世界が日本に求めているものだと考えます。なぜなら、ある意味ではトランプは正しい。日本は今までのような大規模な貿易黒字を出し続けることはできません。日本の人々が生産するものを、日本国内で吸収する必要があります。しかし、そのためには需要を増やさないといけません。ですが、既にたくさんカネを持っている人々に、さらにカネを与えても、彼らは需要を増やすことはありません。彼らがaあといくら購入できるというのでしょうか。 ですから、日本経済をバランスを整え、米国との貿易赤字に依存しないようにするためには、貧困層の所得を増加させる必要があります。これは日本の国益に合致するものです。ですから、私はれいわ新選組を全面的に支持します。 そういうことで、ういこ、がんばれ! (長谷川) ありがとう! (ヤニス) ありがとう。アケミさん、私の日本語の声になってくださってありがとう。 (米村) ありがとう、ありがとう!すみません、私は経済学者ではありません。あなたの動画をいつも見ていますけど、うーん、本当にありがとう。 (ヤニス) どうもありがとう。ありがとう、本当にありがとう。またね。 |
長谷川 |
はい、ヤニスさんちょっとお忙しい中でね、1時間、時間を取っていただきました。皆さんいかがだったでしょうか。非常に明快にですね、米村さんの通訳もあって、非常に明快にですね、言っていただいてましたけれども、消費税をちゃんと廃止して、今まで下から上に吸い上げられていたものを、みんながお金を使えるようにするということ。そして積極財政はグリーン・ニューディールで日本の経済を。アメリカが今トランプ政権になって余計まさに衰退しようとしてる時に、中国と日本が希望だというのが、ヤニスさんのコメントでこれは意外なところでした。日本がまだまだ可能性がある分野でもありますから、ぜひ積極財政でグリーン・ニューディールを実現していきたいなと思いました。そして、やはり石破首相はじめ、日本の財務省および与党も、実は野グリーン・ニューディールなんですが「日本は借金が多すぎる。財政はギリシャより悪い」というのが、いかにナンセンスかというのを、ヤニスさんがまさに一刀両断にしていた今日の対話でした。 皆さん是非、今日の対話を元に、日本でもあの政府債務対 GDP がいかに意味のない指標か、ということと、日本はまだまだ財政出動できるということを訴えていきましょう。消費税の廃止そして脱原発グリーン・ニューディールを、しっかり実現させるべく、動いていきたいなと思っています。 皆さん、今日は本当にご参加ありがとうございました。 米村さんから少しインフォメーションがありますので、米村さん、今日は本当に大変な通訳ありがとうございました。 |
米村 |
行き届かないところがありまして、難しかったです。経済。朴先生ヘルプありがとうございました。 私からのアナウンスメントですけれども、14 日に大石議員に来ていただいて、大きな集会をやりますので、是非皆さん来てください。 |
長谷川 |
はい、ぜひ皆さん、米村さんは今日ご覧いただいた通りですね。もうエキスパートとして、世界を相手に色んな教育支援をしてこられた方ですので、今日の私の無茶なお願いも聞いていただいて、通訳パネリストとしてご参加いただきました。本当にありがとうございました。 ヤニスさんだから、どんな難しい話が出てくるだろうと思って、私もちょっと心配していましたが、割とヤニスさんの中では簡単だった方かなと思います。 私の方からのお知らせです。15 日にですね、私の大きな大集会を、実はヤニスさんと同じく反緊縮政策のまさに騎手である松尾匡先生と一緒に、そして京都の総支部長である西郷南海子さんにも来ていただいて、京都でキャンパスプラザ京都で、大集会をしますので、皆さん是非このヤニスさんの話も踏まえて聞いていただくと非常に分かりやすいかなと思います。ぜひご参加ください。 はい、それではれいわ新選組も全面的にバックアップするとヤニスさんに行っていただいたので、本当に心強いなと思います。れいわ新選組は、単に、日本で初めてのことではなくて、世界では私たちの政策の方が主流なんだということ、かなり強く言ってきましたけれども、本当にそのことを今日は実感していただけたんじゃないかなと思います。 米村さん、まさにね、長年世界で活躍してこられて「れいわしかない」と思って参加していただいたわけですから、まさに世界から認められる政党として頑張っていきたいと思います。 皆さん、今日は本当にありがとうございました。 アドバイザーとしてついてもらった朴さんも、本当にありがとうございました。皆さん是非ヤニスさんの回顧録、『黒い匣』是非、皆さんもまた読んでみてください。枕のように太いですが、これに書いてあることを読むとですね、ヤニスさんがまさに山本太郎代表のように、たった1人でヨーロッパの巨大権力と立ち向かう様子が描かれています。すごく共感できる本ですので、こちらも是非また読んでみてください。 今日は本当に皆さんありがとうございました。米村さん、本当にお疲れ様でした。皆さん聞いていただいてありがとうございました。それでは、ういこゼミスペシャル、ヤニス・バルファキスさんとの対談、これで終了とさせていただきます。ありがとうございました。 |
米村 |
ありがとうございました。 |
朴 |
ありがとうございました。 |